2026/09/13 03:01

こんにちは、紙単衣の水引デザイナー小松です。

贈る相手への心遣いや敬意を形にする日本の伝統素材「水引(みずひき)」。
ご祝儀袋や不祝儀袋の結び飾りとしてはもちろん、近年ではアクセサリーやインテリア、クラフトの素材としても注目を集めています。

今回は、水引の基本的な意味や歴史的背景、主な種類、そして現代の暮らしでの楽しみ方まで、改めてご紹介いたします。

1. 水引とは?基本的な意味

水引とは、和紙を細く割いて撚(よ)りをかけ、糊(のり)を塗って乾かし固めた紙紐(かみひも)のことです。
こより紐の表面に、色染めや極細の糸、アルミ箔などを巻きつけることで、300〜400種類のバリエーションがあります。
知る人ぞ知る業界の話にはなりますが、毎年、新色も廃盤も出ています。

水引の作り方は、長野県飯田市の水引工場を見学したことがありますので、興味のある方は、noteの見学レポートをご覧ください。

▼効率重視の機械化に成功! 水引工場見学レポート@長野県飯田市 - 紙単衣note

水引は、主に祝儀袋や香典袋、贈答品の包み(進物)に掛けられる飾り紐として用いられてきました。
水引を結ぶことには、主に3つの重要な意味が込められています。

◯未開封であることの証明:包みが途中で開けられていない(他人の手が触れていない)ことを示します。
◯魔除け・清め:神聖な結び目によって、贈り物やその場の空間を清め、悪気を払う効果があるとされてきました。
◯人と人との縁を結ぶ:解けない結び目や美しい輪を通して、贈る人と受ける人の絆や良縁を強める象徴とされています。

昭和時代以降は、ご祝儀袋や贈答品だけでなく、結納品、正月飾り、寺社のお守りや装飾品など、幅広い用途に用いられています。

贈答用ののし紙や一部金封に水引細工がプリントされている袋があるのは、プリント技術が高まった頃に、簡略化されて販売され始めたためです。

2. 水引の由来と歴史

水引の起源にはいくつかの説がありますが、公的資料や歴史的記録において代表的な諸説をご紹介します。

▪︎遣隋使の献上品説(もっとも広く知られる説)
推古天皇15年(607年)、小野妹子が遣隋使として隋(中国)から持ち帰った献上品に、赤と白に染め分けられた麻紐が結ばれていたことに由来するという説です。
この麻紐には「航海の無事を祈る」「献上品が未開封である」ことを示す意味合いがあったとされ、これに倣って宮中への献上品に紅白の麻紐を結ぶ習慣が定着したといわれています。
※公的・歴史資料の参照:文化庁や伝統工芸に関する解説資料(宮内庁・外務省等の日本文化紹介等)においても、飛鳥時代の遣隋使の交流が水引の原型となったという記述が一般的です。

▪︎命名の由来に関する諸説
「水引」という名称の語源にも複数の説が存在します。
◯製造工程に由来する説:和紙の糸に糊水を引き伸ばしながら塗って乾かす作業工程(「水を引き伸ばして塗る」)から名付けられたとする説。
◯麻の漂白に由来する説:原料となる麻や紙を水に浸して引き揚げ、清めて漂白したことから生まれた言葉とする説。

▪︎江戸時代から現代への広がり
室町時代以降、素材が麻から和紙へと変化し、江戸時代には侍の元結(髪を結う紐)や贈答用の結びとして製法が発展しました。明治維新による断髪令で元結の需要は減少したものの、その高度な加工技術は結納品や祝儀袋、美術工芸品へと応用され、現在の色鮮やかな水引文化へと引き継がれています。

別の名称由来や産地の歴史の話も過去にnoteに綴っていますので、興味が湧きましたら、ぜひご覧ください。
昔は寺子屋や女学校で習っていたので、みんな自分で心を込めて結んでいたのです。

▼水引の歴史 - 紙単衣note

3. 水引の結び方の種類と意味

水引の結び方にはそれぞれ明確な意味があり、用途に応じて正しく使い分けることがマナーとされています。

【水引の代表的な結び方】
① 結び切り(むすびきり)
両端を引っ張っても解けない結び方です。「二度と繰り返さないでほしいこと」に用います。
用途:婚礼(結婚祝い・引き出物)、快気祝い、病気見舞い、香典・法要(不祝儀)

② あわじ結び(あわび結び)
結び切りの一種で、両端を引っ張るとさらに強く結ばれるのが特徴です。「互いに強い結びつきで結ばれますように」という意味が込められています。
用途:婚礼、開店祝い、香典など(慶弔問わず幅広く使えます)

③ 花結び(はなむすび)/ 蝶結び(ちょうむすび)
何度も結び直せることから、「何度あってもおめでたいこと」に用いられます。
用途:出産祝い、入学・卒業祝い、長寿祝い、一般的なお礼や季節の贈り物(お歳暮・お中元)
※解けやすいため、結婚祝いや病気見舞いには使用しません。

100円ショップやコンビニで販売されている金封商品も、全て国内外で人が手で一つひとつ結んでいます。

この他にも水引細工で作れる結びは多数あり、市販の金封もずいぶん華やかな装飾がありますが、アレンジした派生系の技術でできているものがほとんどで、贈答上のマナーから外れないように注意してデザインされています。

4. 水引の色と本数の基本ルール

水引は色や使う本数によっても意味が異なります。

▪︎色のルール
・慶事(お祝い事):紅白、赤金、金銀、など

・弔事(お悔やみ事):黒白、黄白、青白、銀一色など
・神事・特殊な祝い:白一色、紅白など


▪︎本数のルール(奇数と偶数)
水引は基本的に「奇数(3本・5本・7本)」を結んで束にします。陰陽五行説において奇数は「陽の数(縁起が良い数)」とされているためです。もっとも標準的な本数は5本です。

・5本:基本の本数。手先の指5本(丁寧な気持ち)を表すとも言われます。
・7本:より丁寧・豪華な贈りものに用います。
・10本:例外として偶数の「10本」が使われるのは婚礼(結婚祝い)です。5本束を2つ合わせた「二重の縁」を意味し、最高の吉数とされています。

5. 現代における水引の魅力と使い方

伝統的な冠婚葬祭の枠を超えて、現代では新しいクラフトアートやライフスタイルアイテムとしても親しまれています。
結び細工は基本を習得してしまえば、いくらでも応用が可能なので、まだまだ可能性は無限大です。

▪︎ハンドメイド・アクセサリー・小物
しなやかで軽い和紙の特性を活かし、イヤリングやピアス、ヘアアクセサリー、ブローチなどに加工されています。和装はもちろん、洋服のアクセントとしても人気があります。


▪︎季節のデコレーション・インテリア
お正月飾りだけでなく、クリスマスツリーのオーナメントやテーブルコーディネートの箸置き、ラッピングのリボン代わりとして使うことで、日常の空間に和の温もりをプラスできます。


▪︎ぽち袋・メッセージカードのアクセント
シンプルなカードやぽち袋に小さな水引モチーフをひとつ添えるだけで、心を込めた上品な装いに仕上がります。


これまで見てきた贈答用のマナーやルールを、別の用途の作品にも採用するかどうかは、作者のポリシーに委ねられています。
紙単衣は基本的には守りつつ、作るものによっては偶数本を取り入れたり、黄色や黒を用いることもあります。

まとめ

水引は、単なる飾り紐ではなく、相手を思いやる心や感謝の気持ちを視覚的に表現する日本独自の美徳の文化です。
結び方や色合いに込められた意味を知ることで、贈り物に込められた思いをより深く感じ取ることができます。
日常のギフトや手作りクラフトに、ぜひ伝統の水引を取り入れてみてはいかがでしょうか。


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